会社のIT担当者になると「インターネットVPN」「IP-VPN」の言葉を耳にする機会があると思いますが、どのようなものか・どういう部分で違いがあるのかよくわりませんよね。
そもそも、VPNとはどのような技術なのでしょうか?
今回の記事では「インターネットVPN」「IP-VPN」の仕組みやメリットについて、詳しく解説していきます。
この記事の内容
はじめに:「VPN」ってどういう意味?
インターネットVPN・IP-VPNの解説をする前に、まず「VPN」という言葉そのものを解説しようと思います。
VPNとはVirtual Private Networkの略。「仮想プライベートネットワーク」とも呼ばれることがあります。インターネット上の拠点と拠点の間を接続して、不正アクセスを防ぎ安全な通信環境を守るための技術のことを指します。
例えば、社外にいる状態で社内ネットワークへアクセスする際、怖いのは不正アクセスによりデータを「覗き見」されることです。それを防ぐため、インターネット上に「仮想の専用回線」を作る必要が出てきます。この仮想回線こそがVPNそのものです。
そしてVPNにはいくつかの種類・接続形態があるのですが、現在の主流としては大きく2種類に分別することができます。それが「インターネットVPN」と「IP-VPN」なのです。
インターネット網を利用する「インターネットVPN」
インターネットVPNは、その名の通りインターネット網を利用したVPNのことです。
通信データを「暗号化」することにより、インターネット上で疑似の「専用の回線」を作り出しデータの通り道を提供します。
インターネットを利用するということから導入しやすく、ここ数年で利用者がグンと増えています。
インターネットVPNのメリット…
インターネットVPNの魅力は「コストパフォーマンスに優れている」ということ。
IP-VPNよりも格安で利用することが可能になっており、ほとんど同一の条件であればIP-VPNと比べ10分の1ほどの値段で利用できることもあります。
インターネットVPNのデメリット…
IP-VPNと比べて「信頼性」が低い事がデメリットと言えるでしょう。後述するIP-VPNは「閉域網」という専用の回線を使いますが、インターネットVPNはインターネット回線をそのまま利用します。
そのため、不正アクセスが絶対に起こらないとは言い切ることができないのです。
また、インターネット回線を使うので、通信速度の変動など「通信品質」を保証できないというのもデメリットの1つでしょう。
閉じたネットワークを使う「IP-VPN」
IP-VPNは、通信事業者が独自に保有するネットワークを利用するVPNです。このネットワークは「閉域網」と呼ばれ、その名の通り「閉じたネットワーク」と言ってよいでしょう。
IP-VPNは2000年に登場し、それまでの常識を打ち破る画期的な技術でした。IP-VPNは過去「企業ネットワーク」のシェアのほとんどを占めていました。
しかし、現在ではシェアの減少が続いており、代わりに前述した「インターネットVPN」が台頭してきています。
IP-VPNのメリット…
IP-VPNのメリットは、何より「安全性」「信頼性」が高いこと。閉域網を利用しているため、不正アクセスの可能性を極限まで低めることができます。
また、通信速度も高速で安定しており、エラーが起こることもそうそうありません。通信品質が保証されているのもIP-VPNのメリットと言えるでしょう。
IP-VPNのデメリット…
IP-VPNの一番の問題点は「コスト」面です。
手頃な値段で利用することができるインターネットVPNよりも高額であるため、そちらに流れる利用者の方も増えてきています。
またプロトコルがIPしか使えないのもIP-VPNの特徴であり、大きなデメリットであると言えそうです。
インターネットVPNとIP-VPNはどっちを選択すべき?
インターネットVPNとIP-VPNの違いをまとめると次のとおりになります。
項目 | インターネットVPN | IP-VPN |
---|---|---|
コスト面 | ネット回線を使うため安い | 専用の閉鎖網を使うため高い |
安全面 | 不正アクセスのリスクが少なからずある | 不正アクセスの可能性がほとんどない |
速度面 | ネット回線の混雑状況に左右される | ネット回線に比べ、安定して速い |
拠点間でデータのやり取りが必要でになったのでとりあえずVPNを試したい場合は、まずインターネットVPNを導入してみることをおすすめします。
インターネットVPNは、IP-VPNに比べ安全性・信頼性は確かに劣りますが、最近では通信の暗号化技術も向上しているので、そこまで大きな差はありません。
また、近年ではネット回線のスピードもかなり上がっているので、インターネットVPNでもほとんどストレスなく通信できると思います。
ただし、コストパフォーマンス以外の点では、もちろんIP-VPNが優れています。業務の主軸システムに使ったり、機密情報を取り扱う場合はIP-VPNを選択する方が現状でも賢明と言えるでしょう。